本日、独立して２０年が経ちました。吉村順三先生の事務所を辞して自らの事務所を始めましたが、全くこれといった仕事の当てがあるわけではなく、まさに暗闇の海に単独で小舟を漕ぎ出すような気持ちでした。これまでなんとかやって来られましたのは理解あるクライアントの皆様、建築を作り上げてくれた作り手の方々、また拙作を社会へと紹介してくださった編集者の皆様、事務所OB、現スタッフ、たくさんの方々のご支援のお陰であります。皆様にはまずは心から御礼申し上げます。
20年経ちましたが、まだ20年です。５０代も半ばとなり、最近建築というものが益々言葉で表しづらい、わからないものになってまいりました。若い頃は５０も過ぎればおおよそ建築とはなんぞやと確信をもって話せるものだと思っておりました。まったくもって予想外のことですが、一方で建築が益々面白く感じている自分がおります。ひとつの仕事を完成させる度に次なる「問い」が見えてきて終わりがありません。この建築の広漠とした沃野に向かい、今後も皆さまと共に感動を求め、精進してまいりたいと思います。これからも引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2018年4月28日
手嶋保